ウィナの準備とは簡単な事だった。
素体といえばいいのかわからないが、現世へ降りる際の肉体を選べと言う。
1つ目の体は見た目や身体能力など、全てが平均的な体だった。
俺を生き返らせる為には人を殺さなければならない事を考えれば目立つのはまずい。
そういった意味ではベストと言えるかもしれない。
2つ目の体は1つ目と違い、かなり目立つ部類に入る。
しかし、目立つというデメリットさえ何とかすれば活動しやすい体と言える。
3つ目は赤ん坊だった。つまり転生して活動しろと言うことだ。
意識はそのうち復活すると確約はしてくれたが・・・この体は論外だ。
俺「おい、もう少しバリエーションはないのか?」
ウィナ「あとはおじいちゃんとかそーゆーのだけど、いいの?」
俺「・・・・・わかった」
ウィナ「あっははは!ま、時間はいっぱいあるしじっくり考えなよー」
ウィナが俺の体に引っ付いてくる。
100年間近く孤独だったせいらしく無意識にくっついてしまうらしい。
正直、困る。俺は女の免疫が全く無い。
いくらウィナがアホな性格をしていてもぷにぷにと背に当たる感触ばかりはどうしようもない。
俺「邪魔だ。離れろ。どの体にするか考えている最中だ」
ウィナ「いーじゃんいーじゃん。やらしー事もついでに考えちゃっていいよ?」
”んふふー”と悪魔の笑みで笑う。
からかわれている事は百も承知だが、しかし・・・これは・・・。
喋らなければ俺と年相応で美しい女なのだ。
誘惑しているのか・・・?格好が悪魔だしな・・・。
いや、まて。これでは彼女の思う壺・・・と思った瞬間。
ウィナ「ふふー。顔つきの割りにウブなんだねー」
俺「うるさい!」
ウィナ「きゃはは!」
俺は恥ずかしさを隠すために手で払いのける。
ウィナはケラケラ笑いながら漆黒の翼を使って空中に逃れていた。
黒い衣装だと思っていたが、翼だったのか。
まるで茶番劇だな。俺も、この悪魔も・・・。
苦笑しながら考える。どの体にするか。二者択一なのだがそれ故に悩む。
ふーむ、うーむと唸っていると、ウィナが俺の隣に降りてきた。
何のようだ?と聞こうと思って思い直す。
構えば話に乗っかってくるだろう。今は自分の体が最優先だ。
どの道、あっちから我慢できずに話しかけてくるだろうと思っていたが
あてが外れたようだ。じぃっと見られ続けるのもなんだか照れくさい。
俺「何のようだ?」
ウィナ「勝った~!」
俺「は?」
ウィナ「どっちが先に話し出すか勝負してたんだよー」
にははと笑う悪魔。
俺「ふざけてると二度と口は利いてやらん」
ウィナ「ごめんごめんってー。ゆるして・・・ね?」
ね?が遅れて聞こえてきた。どうやら頬にキスされていたらしい。
本当にどうしようもない・・・疲れる悪魔だ・・・。
どうしても今日は遊んでほしいらしい。そのぐらいの意図はもう、読めた。
しょうがない奴だなと苦々しく言うとパァっと顔が明るくなる悪魔を見て思った。
本当に寂しかったんだな、と。
なら1日ぐらいは良いかと自分でも変だと解る理由をつけて、とりあえず体選びを諦めた。
目覚め-1-1-2- 完
*ルール
リンクフリーです。
文字転載はコメント欄より連絡をしてください。